
泡盛の古酒の一番の魅力はその香りにあると言ってもいいかもしれません。
かの尚順男爵は3つの香りで古酒を表現し、最近では国税庁が泡盛フレーバーホイールを作成しています。
味覚とは95%が嗅覚で、残りの5%が味とも言われています。古酒を楽しむために香りについてまとめてみました。
目次【本記事の内容】
古酒の香りと尚順男爵
琉球最後の国王、尚泰王の四男である尚順男爵は「鷺泉随筆」の古酒の香り就ての中で標準的な古酒の香りは3つしかないと書いています。
- 1つ目は「白梅香かざ」で鬢付油の匂い
- 2つ目は「トーフナビーかざ」で熟れた頬付(ほおずき)の匂い
- 3つ目は「ウーヒージャーかざ」で雄山羊の匂い
香りで古酒をランク付け!?
あくまでも著者の推測とことわりがありましたが「琉球の宝 古酒 古酒造りハンドブック(山入端艸以)p77」で尚順男爵の3つのかざにはランク付けがあったのでは?という考察が興味深かったのでご紹介します。
ざっくりと要約するとこういうことでした。
- 白梅香の古酒は厳正に管理された良質のクースであろうと思う。他の二つはその匂いから判断すると古酒として品質低下そのもの。
- 白梅香かざは表現は別として現在も極上の古酒の香りに見られるもの。
- トウーフナビかざの古酒は当時としてはごく一般的な手法で古酒造りされていた古酒であったと思われる。焦げ臭、末垂れ臭ともいう。
- ウーヒージャーかざは油成分が非常に多く雑菌侵入の可能性が高い。仕次ぎの際、甕口へこぼれた泡盛分や蓋などに雑菌などが混入して悪臭の原因となった可能性が高い。
ひとつの見解ですが、なるほどと感じた点も多かったです。
もしウーヒージャーかざがすると言われる古酒と出逢うことがあれば、品質低下していないか?冷静に味わってみようと思うきっかけになりました。
泡盛の古酒好きを自称するならぜひ知っておいて欲しい見解です。この話しを肴に古酒談議をしてみたいなぁ~(^^♪
泡盛フレーバーホイール
沖縄で泡盛マイスターの先輩方と飲んでいる時に古酒の香りの話しになりました。
泡盛マイスターの大先輩が思う代表的な古酒の香りは、5つで
- ①バニラ
- ②ナッツ
- ③チョコレート
- ④森林
それから「⑤ごはんですよ!」の香りという話を聞きました。
「⑤ごはんですよ!」というのは・・・そうです!桃屋のごはんにのせて食べるあの海苔の佃煮です。
尚順男爵が古酒を3つの香りで表現されたのは、昔は例える香りが少なかったからだろうということでした。
古酒に限ったものではありませんが、泡盛マイスター協会から代表的な泡盛の香りを円状に整理した泡盛テイスティングチャート(初版)が公表されています。
泡盛マイスター協会のサイトからダウンロードできます。現在リンク切れです

さらにシンプルにまとまった泡盛フレーバーホイールは国税庁のサイトからダウンロードできます。
トーフナビーかざの秘密に迫る
尚順男爵の3つの香りの中で鬢付油はオイリーな香り、雄山羊は動物的なフェロモンの香りでしょうか。
この2つはなんとなくイメージできたのですがトーフナビーかざはなんとなくもイメージできません。トーフナビーかざというのは豆腐ようではなく、熟れたほおずきの香りのようですね。
スーパーで奈良県産の食用ほおずき(キャンディ・ランタン)を見つけたときに、熟れた頬付の匂いというものをじっくりと体験してみようと思い立ちました。

パッケージの「完熟品はまるでマンゴー」というコピーに本当かよ?と思いながらも袋の中に鼻を突っ込んでみると、ほんのり甘い香りが漂っています。

食べ頃は、黄色く熟した時と書いてあります。
緑が強いこの色じゃまだ熟していないみたい。熟したらさぞいい香りがするんでしょうね。

トーフナビーかざに期待大です(^^♪
1ヶ月経過|マンゴー様の香り

カラカラになった皮をむいてみました。ほおずきの実を触るとベタつきます。
根拠はないけど、こういった変化を感じるとかなり期待してしまいますね。実から甘い香りが漂ってきていて、完熟するとマンゴーみたいと評されるのも納得です。

さて熟れたほおずきを食べてみましょう!
皮ごとリンゴを食べたような食感。リンゴでもミニサイズの青リンゴで、シャリシャリ感が少ないリンゴの雰囲気です。
食用ほおずきはストロベリートマトと言ったりするようですが、種が多いって感じはなく、いちごもトマトもちょっとイメージしにくいですね。
1ヶ月半経過|種が堅くなっている
1ヶ月経過したときは特に種が多いとは思わなかったけど、改めて食べてみると種がしっかりした硬さになっていて、種が多いなぁと思うほどに食感が変化していました。
これならストロベリートマトといわれるのも納得です。
岩手県産のほおずきを熟成させてみた
岩手土産に食用ほおずきをもらったので、これも熟成させてトーフナビーかざをチェックしてみました。
奈良県産と比べると岩手県産の方が1.5倍くらい大きいです。

肝心の香りの印象もだいぶ違います。
奈良県産のはマンゴーの様な甘い香りでしたが、岩手県産は・・・まるで、ココナッツ!?
もっと言うとサンオイルのコパトーンの匂いなんですよ。我ながらこれはかなり的を得ていると思います。
古酒の香りにはナッツ様の香りがあるので、特別違和感を感じるような香りでもありません。他には橙というかオレンジの様な酸っぱさを連想させるような香りも感じます。
香りを味わった次は、いざ試食です!

上は輪切りにしたもので下は縦に切ったもの。見た目からもわかると思いますが、かなり種を感じます。
味も奈良県産のものとは全然印象が違いました。少し皮の部分が青臭いような、まだ青いイチジクのような味わいと酸味を感じました。
トーフナビーかざ、熟れたほおずきの香りといっても、マンゴー様の甘い香りからナッツのような香りまで幅広い香りに表現できるというのは面白い発見でした。
- マンゴー様の甘い香り
- ナッツ様の香り
少し専門的なほおずきの香りのお話
香りの専門家である泡盛マイスターの先輩がまとめられた「ほおずきの香りに関する論文」をみせていただきました。
簡単にポイントをご紹介します。
- ほおずきといっても食用のしまほおずきと観賞用のほおずきの大きく2種類あること
- しまほおずきは観賞用のほおずきに比べて香りの成分数が多い
- 鑑賞用のほおずきの37成分に対して、しまほおずきでは4倍以上の137成分が確認できた
- しまほおずきの香りを構成する成分はラクトン類が豊富でココナッツ様の香りの元になっている
- エステル類が幅広く含まれていることで多様なフルーティな香りを感じることができる
この分析結果から奈良産のほおずきからはマンゴー様の香り、岩手産のほおずきからはナッツ様の香りを感じたことが納得できました。
香気成分について正確な知識があれば、泡盛のテイスティングをするときに感覚的な表現に片寄ることなく、化学的にも的確な表現ができそうですね。
泡盛の古酒の香り、トーフナビーかざについて貴重な資料に触れることができました。ありがとうございました。
コラム|トーフナビーかざを再現してみた
古酒の香りのひとつであるトーフナビーかざは完熟したマンゴー様の甘い香りだとわかったので、マンゴーの香りをもっと楽しむためにこれを泡盛を割ってみました。
これはセゾンファクトリーのマンゴードリンク(マンゴー果汁60パーセント)です。
ほとんど知られていないと思いますがセゾンファクトリーは山形県の会社なんですよね。
隠しているとは言わないまでも、できるだけ出さないようにしてるんじゃないか?と山形県人会の集まりでは話題になります(笑)
原材料を見ると既に洋酒が入っているらしい。洋酒って何なのか?わかりませんけど、トーフナビーかざのマンゴーの香りのご縁でここは泡盛を使って欲しいなぁと思いました。
まあ泡盛が入ってないならやっぱり自分で入れるしかないですね(笑)
43度の古酒をちょっとプラスしてみました。
意外や意外!マンゴージュースの濃厚さと43度の泡盛のパンチ力が相まった結果・・・とっても飲みやすくなりました。
ついつい飲みすぎてしまいそうな危険な香りがします。おちょこで1杯ぐらいにしておいた方が良さそうです(^^♪
食用ほおずきから感じる香りはマンゴーとココナッツ様の香り。
セゾンファクトリーのマンゴードリンクにココナッツミルクが入っているのはとても偶然とは思えない・・・