
与那国島で造られている花酒。この花酒の存在こそが泡盛が強い酒と思われる最大の理由なんじゃないかなと思っています。
というのも花酒はアルコール度数が60度で一般的な泡盛の30度の2倍です。でも勘違いしている方が本当に多いのですが、実は花酒は泡盛ではありません。1)
じゃあなんなのって感じですよね??
こういった疑問に答えます。
目次【本記事の内容】
花酒と泡盛は何が違うの?
造り方からいえば泡盛なのですが、60度は泡盛のアルコール度数の上限である45度を超えてしまうため法律上、泡盛を名乗ることができません。
法律上は原料用アルコールに分類されます。1)
ちなみに市販されている泡盛が44度ではなく43度が多いのは、何かのはずみで45度を超えることがないように安全面から43度にしているようです。
泡盛と花酒の造り方は違うの?と問われれば限りなく同じです。
というよりも初留(蒸留後、最初に出てくる度数の高いお酒)を商品にしたものが花酒で、度数を調整して45度以下にしたものが泡盛というように商品のバリエーションの違いと捉えてもらうとわかりやすいと思います。

45度を超えても「泡盛」表記可能に!
1)規則の改正により45度を超えていても泡盛と同じ製法であれば「泡盛」と表記することが可能になりました。規則|酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行規則。詳細は令和2年3月31日官報の財務省令第28号
今後は花酒も「泡盛」と表記されるかもしれませんが、あくまでも「酒類」は原料用アルコールのようです。
一方で、新型コロナウイルス感染症の発生で「手指消毒用エタノール」の需給が逼迫している状況を改善するため、厚生労働省から、医療機関等において、やむを得ない場合に限り、使用者の責任において、「高濃度エタノール製品」を「手指消毒用エ
タノール」の代替品として用いても差し支えないとの取扱いが示されました。
そこで、泡盛メーカーからも数多くの「高濃度エタノール製品」に該当する65度から80度までの酒類が造られました。
- 石川酒造場 80度(原料用アルコール表記)
- 崎元酒造所 78度
- 瑞泉酒造 78度
- 久米仙酒造 78度
- 八重泉酒造 77度(泡盛表記)
- 崎山酒造厰 77度
- 請福酒造 77度
- ヘリオス酒造 77度(スピリッツ表記)
- 新里酒造 77度
- 龍泉酒造 75度
- まさひろ酒造 66度(スピリッツ ウォッカ表記)
- 忠孝酒造 65度
なお「高濃度エタノール製品」に該当する酒類のうち、一定の要件を満たし「飲用不可」表示を施した高濃度エタノール製品については「酒税は課されない」取扱いになっています。酒税が課されないものはそもそもお酒ではないので、泡盛と表記されません。
上記のすべてを詳細に確認できていませんが、YAESEN77は泡盛の表記なのを確認しました。

現時点での結論です。花酒を含めて45度を超えても「泡盛」と表示できるようになったので、泡盛の最高度数は77度ということになります。
花酒の由来は?
もろみを蒸留すると初めに出てくる初留の部分はアルコール分が70~75%と高いので、盃に注ぐと細かい泡が花のようにいっぱい立ったからだと云われています。
参考:「泡盛の文化誌 沖縄の酒をめぐる歴史と民族」176ページ

花酒が与那国島で造られている理由は?
土葬に際して遺骸を墓に納めるときに花酒を一緒に墓に収めて、7年後に洗骨するときにその花酒が使われたことから、花酒には与那国島の宗教的な慣習との結びつきがあったから与那国島でのみ花酒が造られていた(造ることが許されていた)。
という記述を読んだことがあります。
ただし「泡盛の文化誌 沖縄の酒をめぐる歴史と民族」175ページによると、こういった慣習は島尻地方(沖縄本島南部)でも行われていたようなので、与那国島のみに許された理由としては弱いのかなと思っています。
2017年に与那国島に行ったときに島の方に教えていただきましたが、現在では火葬後に納骨というスタイルに変わっています。ただし島には火葬場がないため一度、石垣島に運んで火葬しているということでした。
花酒の種類
与那国島には泡盛の酒造所が3つあってそれぞれで花酒が造られています。
- 入波平酒造 「舞富名(まいふな)」
- 国泉泡盛 「どなん」
- 崎元酒造所 「与那国」
60度だけではなく60度を超えるものもあります。これは65度の舞富名で復帰40周年記念の花酒です。
これを買ったときは65度が花酒の最高度数だと思ってましたが71度の花酒も存在するみたいです。泡友さんのfacebookの投稿で知りました。超初留なんでしょうね、びっくりです!今となってはインパクトは弱くなってしまいましたが。

舞富名 花酒 65度
入波平酒造
この舞富名は60度の花酒(原料用アルコール)です。

舞富名 花酒 60度
入波平酒造
こちらも同じ舞富名ですが30度なので泡盛ということになります。

舞富名 30度
入波平酒造
30度の舞富名のラベルは与那国島で発見された世界最大の蛾「ヨナグニサン」が使われていて愛嬌?がありますが、60度の方はクバ巻きの瓶でいかついイメージです。
加えて花酒のラベルはシンプルで、花酒はアルコール度数が高ければラベルなんてどうでもいいのさ~的な質実剛健といった雰囲気が漂っています。
30度の泡盛も決してアルコール度数が低いとはいえませんが花酒と比べると半分ですからね(汗)
ちなみにこの2つの花酒で度数当てに挑戦したこともあります(笑)

花酒のおすすめの飲み方は?
泡盛の場合、初心者の方には水割りやソーダ割りなどで飲みやすくして飲んでもらうことをおすすめしていますが、花酒に関しては真逆です。
花酒ならではの高い度数を楽しんで欲しいのでストレートで飲むことをオススメします。飲み方は常温ではなくパーシャルショット。
パーシャルショットというのは瓶のまま冷凍庫でキンキンに凍らせる飲み方です。

凍らせるといっても度数が高いので凍りません。少しとろみが出てきたかなという程度です。
これは花酒ではありませんが、パーシャルショット名物のチェイサーにオリオンビールって奴です。原酒53度には小さめのオトーリ用のグラスが丁度いい。もちろんめっちゃチビチビ飲みます。
コラム|花酒でフランベしてみた
アルコール分が60度もあると火がつくので簡単にこんな演出ができます。

イチジクを泡盛でフランベすることを思い立ち、皮付きと皮を剥いた2つのイチジクを用意しました。

アルコール分が43度もあれば十分に火がつくだろうと考えて、まずは皮付きを43度でファイヤー!してみたのですが予想に反して火の勢いが弱く、終始メラメラっていう感じ。

ボー!ボー!のファイヤー感を期待していたのでこんなんじゃ全然納得できない。。
なんでこんなことをしているとかいうと・・・実はあるイベントのために泡盛を使った目にも美味しい演出を考えているのでその為のテストです。
こうなったら60度の花酒でリベンジだ!と思ったけど60度でも火の勢いがしょぼかったら面白くないので、秘蔵の65度の舞富名をひっぱり出してきました。今度は皮を剥いたイチジクに花酒をヌリヌリ。

65度の花酒でフランベした様子が↓こちらです。

照明もできるだけ落として撮影しましたが、火を着けたその瞬間だけいい感じに炎が上がったもののまたメラメラ系。期待していただけに不完全燃焼です。
そうは言っても食べてみました。65度の方は皮を剥いていたので結構焦げ目が目立ちます。美味いといっても生のイチジクを加熱しただけなので、美味しさは想定内ですね(苦笑)

グラニュー糖を降りかけてバーナーで焦げ目を付けたら味は良くなると思うんですが、それだと泡盛を使わないので話が変わってきます。
あくまでも演出ですが、泡盛でボォッ!と炎が上がるのが理想です。炎が上がるのは一瞬でよくて、なるべく大きい炎が理想なのですが何かいい策はないものでしょうか? ※テーブルの上でできる方法に限ります。
アイスはどうだ?
アイスは期間限定で何より美味しそうだったラ・フランス味にしてみました。それからジェラートマイスターという響きにも惹かれました(^^♪

アイスを練るとなめらかでおいしくなると書いてあったので、しっかり練ってみるとアイスがとろーり。トルコアイスっぽい?

イチジクのフランベがいろんな意味で不完全燃焼でしたが、性懲りもなくアイスに垂らした花酒に着火してみることに。てかっているのが花酒がかかっている部分です。

これがイチジク以上に苦戦、まったく火が着きません。花酒がアイスに染みこむから無理なんでしょうか、またしても撃沈です。

そもそも花酒の火力ってどんなもんなの?って疑問がふつふつと湧いてきたので65度の花酒に点火してみたらこのとおり。65度を納得できる立派な炎を確認しました(^^♪

この花酒はちょっと香ばしいので、チョコ系とかフルーツ系じゃないアイスの方がマッチするかもしれません。残念ながら火は着きませんでしたが、65度の花酒のおかげでパンチの効いたラ・フランスアイスを堪能しました!
着火のポイントはカルデラ
家では上手く着かなかったけど、きき酒会の時にチャレンジしてみたら見事にファイヤ~。

カルデラを作ってそこに花酒を溜めることがうまく点火するポイントみたいですね。美味しいお酒に火を着けるなんてもったいないという話もありますが、これも楽しみ方のひとつかなと。

コラム|実はマイルドな泡盛もあります
泡盛のイメージってやっぱり強い酒・きつい酒でしょうか?
泡盛はアルコール度数30度のものが多く、40度を超えるものもあります。こう書くとワイルドなお酒って感じがしますね。
どっこい、そんな泡盛にもマイルド感を打ち出したものもあります。ラベルにマイルドと表示した泡盛で、マイルドと表示するには25度以下じゃないとダメなのです。

宮里酒造所さんの「春雨マイルド(25度)」もそんなマイルド泡盛。
宮里酒造所でお話を伺った時に「春雨マイルド」は食中酒として中でも刺身やお寿司と一緒に楽しむことを前提に開発された泡盛だと教えていただいたので、サーモンのカルパッチョと一緒に飲んでみると想像以上に合いました(^^)

マイルド泡盛の中には12~15度といったワイン、日本酒と度数の変わらないものもあります。
春雨マイルドよりもさらに度数が低いのがこちらの和乃春雨、度数はなんと15度です。ラベルにマイルドの表示がなくて説得力がありませんが(汗)

強い酒、きつい酒というイメージだけで泡盛を敬遠しないで少しの勇気を出して(笑)、泡盛を楽しんでみてください。きっと想像以上に飲みやすくて泡盛のイメージが変わるはずですよ!!