10年という歳月に思いを馳せる 瓶熟成の効果

泡盛は熟成させると味わいが増す(美味しくなる)という特徴があり3年間熟成させたものを古酒(こしゅ、クース)といいます。

 

泡盛の熟成というと甕で寝かせるイメージがありますが、泡盛は瓶詰めされた後も熟成が進み瓶で熟成させたものを「瓶熟(びんじゅく)」と言ったりします(瓶熟は瓶熟成の略ですね。ほとんど省略されてませんが)。

 

でもこんな声が聞こえてきそうですね。 


「瓶のままで?ほんまかいな?」

確かに瓶で10年間熟成させた泡盛が美味しくなるどころか残念な感じに変化していたという話を聞いた事があります。一方でこんなに美味しい「宮の鶴」は飲んだことがないと唸るほどに美味しく育っていたということがありました。その宮の鶴はラベルの杜氏のお名前が先代のものだったのでかなり古いものだったと記憶しています。

 

他にも瓶熟の7年古酒、8年古酒などを飲んだ時は美味しくなっているように感じましたが、とはいっても瓶で熟成したものと新酒を並べて飲み比べたわけではないので実際のところどうなんでしょうか?やってみないとよくわからんというわけでやってみましょう(^^)/


ラベルが違う2つの豊年

瓶熟の効果に迫るのにうってつけのものが手元にあります。瓶詰めされた日が10年違う「豊年(30度)」・渡久山酒造の一升瓶です。

 

左は平成16年に瓶詰めされたもので右は平成26年に瓶詰めされたもの。10年という歳月をかけて泡盛が瓶の中でどんな変化を遂げているのか同じ銘柄で飲み比べてみるのも面白そうだなと買っておいたものです。

    

左の豊年の詰口日は「16.12.2」です。詰口日というのは賞味期限ではなく泡盛を瓶詰めした日を記載しているもの。ちなみにアルコール度数の高い泡盛は腐ることがないので賞味期限はありません。撮影したのは2015年(平成27年)なので、16は2016年ではなく平成16年。ラベルも現行のものとは違った見慣れないラベルですね。

右の豊年の詰口日は「26.6.19」なので平成26年に瓶詰めされた比較的新しいお酒になります。

ちなみに左のものは買ってから家で10年間保管しておいたわけではありません。それほど意志は強くないので(笑)。2本とも偶然にも同じ日に買ったのですがお店は別です。左のものはかれこれ10年以上売れ残っていたことになりますね。

 

瓶は甕と比べると熟成のスピードは緩やかといわれますが、それでも10年寝かせておけば立派な古酒になっているはず。さて結果は!


やっぱり比べるとよく分かる!

10年間熟成させたものは角がとれて丸くなっています。香りは控えめな印象で口当たりがまろやかですね。特に飲み込んで喉を通る時にまろやかさが良くわかります。

 

さらにわかりやすい違いは度数です。どちらも同じ30度なのに10年間熟成させた方は度数が低く感じます。25度と言われればそうかなと思ってしまいそう。

 

どちらを美味しいと感じるかは好みの問題かもしれませんが、とにかく古酒を育てるということを難しく考えなくてもいいんだという確信を持ちました。

 

瓶熟の場合もアルコールと水が組み合わさって味が丸くなるのは甕貯蔵と一緒ですが、瓶熟は泡盛が空気を吸えないため窒息状態となり香味成分の変化は甕貯蔵と比べると起こりにくくなるといわれています。瓶での熟成スピードは甕と比べると緩やかということになりますね。

 

古酒を育てるといっても難しく考えずに泡盛を買ってただ家に置いておけばいいだけ。

直射日光の当たらない場所、暑くなり過ぎない場所この辺りは気をつけてくださいね。   

 

さあ古酒造りを始めてみませんか?

文:泡盛マイスター伊藤 薫