泡盛が水になってる!?|失敗に学ぶ甕で古酒造りの秘訣

ある酒屋さんでのこと。 

 

はじめてのお店でしたが店主と泡盛談議に花が咲き「その泡盛ならそこにあるよ」と店主が指差すその先には、大きな一斗甕がありました。

 

商品ではなくお店で育てている泡盛の甕です。 

 

店主が中の泡盛を汲み出す様子を見守っていたのですが、味を確認した店主がひとこと・・・

 

「水になってる・・・」

 

僕もひと口味見させてもらうと確かに水のようになってました。

 

掘り下げて表現すると泡盛の空瓶に水を入れて、それを飲んだような味の液体でした(>_<)

 

汲み出すときに店主が甕の中にかなり腕を入れていたので、大分中身が少なそうだけど大丈夫かなと思ったら案の定でした。

 

甕で寝かせている間に古酒になるどころか、水っぽくなってしまった泡盛との悲しい出会いのお話でした。

 

本記事では甕で古酒造りをするときの秘訣を参考文献とともにご紹介します。注意すべきポイントは代表的なものを厳選しました。


尚順男爵に学ぶ仕次(しつぎ)のタイミング

かの尚順男爵がご自身の失敗から得た古酒造りの秘訣を「鷺泉随筆」の中でこう書かれています。

 

仮令(たとい)、最初の親酒はあっても継ぎ足す時に、新醸の酒(俗にいうシピャー)でも入れたら、親酒は全く代なしになって、馬鹿を見た例は幾らもある。

 

私は此失敗をば予て知っていたから前轍は踏まなかったが、小瓶に古酒を貯えながら旅行の為仕次を怠って折角の古酒をば悉皆、水の様に死なした経験は幾度も見た。

 

旅行のため仕次(しつぎ)をするタイミングを誤ったという、ちょっとしたことでも古酒を育てるときには命取りになるということです。

 

尚順男爵でさえ何度も水にしてしまったというくらい古酒を育てることは難しいようです。素人が失敗するのは仕方のないことなんでしょうね。

 

古酒づくりに使う泡盛は度数が高いものが多いと思いますが、それでも油断は禁物。泡盛の甕はまめに点検をしないといけませんね。


尚順男爵に学ぶ甕の選び方|大きさ・焼き方

そこで、色々と研究の結果、早く酢敗する原因が容器の小さい割りに口が広く、酒精分の放散が多くなって、少しでも仕次を遅らすと忽ち腐水(酒を取った後に残る水分の名称)になって仕舞うという事が漸く分かったので、此れを防ぐには是非共貯蔵の酒量を多くして、夫に適応する容器を持たねば駄目だと思っている時に、(略)

 

要するに、たくさんの泡盛を貯蔵すること、そのために大きな甕でアルコール分の蒸発をできるだけ抑えるために、甕の口が小さいものを選びなさいということですね。

  • 大きな甕
  • 口が小さい甕

完全に密閉された容器に保管しない限り、泡盛は時間とともに少しずつ蒸発します。

 

水分とアルコール分がバランスよく減っていけば、水っぽくはならないはずです。

 

あのお店の甕の泡盛はおそらくアルコール分の減少が著しかったんでしょうね。泡盛のアルコール分がとんで水っぽくなってしまったようです。

  • 仕次ぎを忘れていたのか?
  • 甕に問題があったのか?

そもそも何度の泡盛をいつからその甕で保管していたのでしょうね。

 

かなり気になるところでしたが、あまり触れてはいけないような気がして深追いできなかったので(笑)、詳細は分からずじまいです。

 

ちなみに、甕は少し黄色っぽくて俗に言うしっかり焼き締められた甕とは程遠い雰囲気で、一般的な泡盛の甕よりも中身が蒸発しやすそうに思えました。


甕の選び方|素焼き VS 釉薬あり

できるだけ多くの視点から沖縄を知ろうと、泡盛マイスターの先輩から譲り受けた「沖縄幻想(奥野修司/洋泉社)」を読みました。

 

といっても、やっぱり興味があるのは泡盛について書かれているページ。著者が考える沖縄の観光資源として取り上げられていたのがこの3つでした。

  • やんばるの森
  • 城(ぐすく)
  • 古酒

 古酒造りにまつわる内容が書かれているページで手が止まりました!

 

「貯蔵する甕は素焼きがいいと言われるが、根拠があるわけではない。素焼きなら「酒は呼吸できるはずだ」という、何となくわかったような理屈からである。」「むしろ釉薬をかけた甕の方がよかったり、・・・」   

 

これらは沖縄随一の古酒の理論家である、謝花 良政氏の古酒造りのエピソードによるものです。

 

古酒造りには釉薬がかけられていない甕が適しているというのが定石とされているにも関わらず、同じ泡盛を釉薬がかけられた甕とかけられていない甕で寝かせて比較されたのでしょうね。

 

このエピソードひとつをとってみてもかなりのお金と時間を費やして、古酒造りを実践されてこられたのが伝わってきます。

 

釉薬をかけた甕の方が良かったなんて聞くと、古酒造りというのは想像以上に奥が深いなぁとしみじみ思います。

 

僕はまだ甕での古酒造りを始めたばかりですが、10年後、20年後にどんな古酒に育つんだろうかと考えるだけでワクワクします(^^♪ (2015年8月18日)


甕に入れる泡盛の量はどのくらいがいい?

「琉球の宝 古酒 古酒造りハンドブック(山入端艸以)」は、謝花流古酒造りを中心に泡盛の古酒造りについて書かれた本です。

 

謝花流古酒造りでは、詰めた泡盛の表面と蓋の先端とのすきま(この空間をヘッドスペースと呼ぶ)は3〜5cmにするのが良いとのこと。

 

泡盛仕次古酒秘蔵酒コンクールに出品するときに、一番甕から汲み出した分の泡盛を二番甕から補充するときは、これに従っていつもより多めに泡盛を入れてみました。

ヘッドスペースが3~5センチになるように泡盛を補充
ヘッドスペースが3~5センチになるように泡盛を補充

また、この本で紹介されている琥珀色に輝く極上の古酒というものを飲んでみたいと思い、ずっと探していましたがやっと見つけることができました。

 

これがその琥珀色に輝く極上の古酒(古酒まさひろ南蛮貯蔵)です。

 

見てください!樽熟成じゃないのにこの色! 

古酒まさひろ南蛮貯蔵@出張泡盛倉庫
古酒まさひろ南蛮貯蔵@出張泡盛倉庫

樽熟成の味わいをイメージしたままで口に含むと、もはや異次元。

 

鉄分をたっぷり補給できている手ごたえをひしひしと感じます。

 

いくら頑張ったところで、ここを目指すには南蛮甕じゃないと絶対に無理なことがよくわかりました。


参考書籍

古酒の話だけではなく、イタミ六十という醗酵した豆腐で作った珍味について書かれた豆腐の礼讃など、尚順男爵の「鷺泉随筆」が収められた松山御殿物語。

 

入手するのは難しいようですが、だからこそ泡盛好きなら読んで欲しい一冊です。

コラム|失われた100年古酒に思いを馳せる

尚詮氏(尚順男爵の六男)の親友が松山御殿物語に寄稿された「松山御殿の思い出」に次のような一文がありました。

 

その玄関の下に地下室があって、そこは泡盛の保存場所で百年以上も前から貯蔵した古酒のカメが十数本おかれていた。詮君がそのカメを開けてサジですくって見せてくれたのが梅色や黄色になった古酒がつまって、香ばしいかおりをただよわせていた。

 

その古酒も倉庫も戦争でなくなってしまった。高価な歴史的遺産がなくなったわけである。

 

百年以上も前から貯蔵した古酒とはまさに尚順男爵の古酒。あの戦争さえなければ、変わらずさらに時を重ねていたことでしょう。

 

50年物、100年物といった古酒を熟成することができるのは、言い換えればその間ずっと平和だったということに他なりません。これからは100年、200年と安心して古酒を育てることができる世界であって欲しいものです。


沖縄幻想 (新書y 219)

奥野 修司 洋泉社


琉球の宝 古酒 古酒造りハンドブック

山入端艸以


定期点検|我が家の甕は水になっていないか?

不運にも水になった泡盛を目の当たりにして自分の甕のことが不安になったので点検しています。

 

いやそれを口実に単に飲みたいだけかも(笑)

 

古酒を育てる時に大事なこと。

  • 定期的に味見をして、おかしなところがないかを確認する
  • タイミングをみて泡盛を注ぎ足す
  • もし甕に問題がありそうなら甕を替える
定期点検@2015年1月
定期点検@2015年1月

甕の泡盛は減りすぎていないし、アルコール度数も低くなってなさそうなので問題なし。

 

甘酸っぱいあんずのような、そして海藻のようないい香りがしていました。

定期点検@2015年1月
定期点検@2015年1月

2013年からこの甕で泡盛を育てているのでまだ2年くらいですが、美味しく育っているようです。千疋屋総本店のミルフィーユとの相性もgoodでした(^^♪

ミルフィーユとマイ泡盛
ミルフィーユとマイ泡盛

僕の場合は、古酒造りの秘訣よりも古酒を飲まずに我慢する秘訣について学んだ方が良いかもしれませんね(2015年1月15日)

 

ちなみに、この甕で育てているのは忠孝酒造さんの忠孝蔵で自分の手で造った泡盛です。 

 甕で古酒造り|準備したもの・定期点検レポートまとめ


おすすめの古酒3選

【1】入門編・5年古酒|菊之露 40度・菊之露酒造

【2】極上・12年古酒|海乃邦 30度・沖縄県酒造協同組合

【3】圧巻・15年古酒|おもろ43度・瑞泉酒造


古酒ってなに?

という方はこちらをご覧ください。

 

「泡盛の古酒ってなに?寝かせると美味しくなるの?そもそも泡盛に賞味期限はないの?」←こういった疑問に答えます。

 

本記事では古酒(こしゅ・くーす)の定義、おいしい飲み方をはじめ古酒の造り方まで沖縄の宝、古酒の魅力を初心者にもわかりやすく解説します。

泡盛の古酒ってどんなお酒なの?|古酒とは